禍福はあざなえる縄のごとし かよぷぅのおもっしょい毎日ぃ

想い出をまとう

ふとした拍子に記憶がよみがえり、その時分のその瞬間に引き戻されることは誰にもあるだろう。

今朝入ったスーパーで、
魚屋さんの手首に残る輪ゴムの痕が目に入った瞬間に 
祖母の手に何本も重ねられていた輪ゴムの束を 突然思い出した。
祖母は四六時中 輪ゴムを手首にはめていたからか
その中の何本かには 必ず白い糸くずのような物が巻きついていたっけ。
重なった輪ゴムの中からスイッと一本抜き出し
私が食べ残した菓子パンの袋の口を 一瞬で結わえる 魔法のゴム使いがよみがえる。
「お母さんは輪ゴムせんのに、ばあちゃんは何でいっつも輪ゴムもっとるん?」
「ばあちゃん、手ぇ赤いで。腐らんのん?」
赤黒いゴム痕のところから 手首が落ちるんじゃないかと本気で心配したこと……。
どうでも良いことなんだけれど 祖母と共有した時間を 〝輪ゴム〟が引き寄せてくれた。

今日は朝から 3月に「家中舎」での結婚式を控えた新郎新婦の衣装選びに同行した。
両家のご両親と兄弟姉妹家族だけで行う結婚式や食事会が 「家中舎」では とても増えていて
この新郎新婦様も その時間のための準備を進めていらっしゃる。
衣装選びに ご持参下さったのは 新婦さんが 成人式の時に着た振り袖。
白無垢の下に振り袖を装うのが彼女のご希望。
なんとこの振り袖は 彼女のお母様が 縫って下さったのだそうだ。
「みどり色が良い」 「派手じゃないものがいい」 というお嬢さんが好みそうな生地を選んで
しあわせな未来を願いながら 針を進めたのだろう… と想像すると それだけで胸が熱くなる。

私が19歳の頃だったか 「佳代が結婚する時には 私が糸から紡いで染めた着物を持たせたいんやぁ。」と
夜毎 茶の間で糸を結んでいた母を思い出した。
「ちょっとは手伝いなぁ」と言われていたような気もするが
ずぼらな私は みじんも興味を示さなかった。
母の夜の日課はしばらく続いていたように思う。
糸を紡ぎながら しあわせを願ってくれていたんだろう。
結果……  
織り上げたり染め上げたりする前に 
私が両親の反対を押し切って とっとと結婚をしてしまったので、
いつしか その糸は 母の着物となり、母が逝ったあとは 私の所で眠っている。

衣装あわせの帰り、家に立ち返り その着物を和箪笥から出してみた。
畳紙を空けると 母が虫除けに入れたものなのか 
桐の木片が詰められた匂い袋が 着物に添えられていた。
他の着物には 匂い袋を施していないところをみると 
糸つむぎからはじめたこの着物には ひとしお愛着があったのだろうと思う。 
反対を聞きいれなかった娘への腹立たしさも
描いた未来と違ってしまった歯がゆさも
思い直して しあわせを願おうとした やせ我慢も…… 
母が語らなかった言葉を 桐の香りと着物が語ってくれている。

ごめんよ。

ありがとう。

さっ、ついでに陰干しして 次の仕事に出かけよう。

今日は たくさんの新郎新婦様とお話しする日だからか
家族の想い出に引き戻されることがいっぱいあるなぁ。
自分の記憶もひっくるめて 
こういう日は ほんわかするんだよなぁ。

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